携帯電話の端末価格は何故安い?

携帯電話・PHSを契約するとき、(特に携帯電話で)「新規1円」等という破格の値段で契約出来ることがあります。
そのからくりの話。

(2007/01/21 更新)



携帯電話の価格

「新規1円」という価格で携帯電話が販売されていることがありますが、これで一体どうやって採算がとれているのでしょう?
そうでなくても、携帯電話の機能を考えれば、かなり安く販売されています。
通話機能、メール機能、カメラ機能、ゲーム機能、音楽再生機能、‥‥等々がぎっしり詰まった携帯電話を、果たして1円等で販売できるのでしょうか?
それではまず、携帯電話の本当の価格はいくらか確認してみましょう。

例えば、mb.softbank.jpから「オンラインショップ」→「携帯電話新規購入」と進んでいき、各端末の現金販売価格を見てみましょう。
2007年1月21日時点では、一番安い端末は705T等で、税込み23,520円。一番高い端末は910T等で、税込み71,280円

はい。もし1円で販売してしまったら、普通に考えれば販売店は大赤字です。


携帯電話価格のからくり

さて、どんなに安くても2万円以上はしてしまう携帯電話が店頭で「新規1円」等という価格で販売されているのはどういうことでしょうか?
キーワードは「販売奨励金(インセンティブ)」です。

販売奨励金とは、キャリア(つまりドコモやauやSoftBankやウィルコム等のこと)が、端末を販売・契約手続きをさせるお店に「新しい契約者を取ってくれたら○万円あげますよ」というものです。
つまり、販売店はキャリアから「販売奨励金」を貰っているおかげで、端末を1円で販売できるのです。(そして恐らく1円で販売しても儲けているのです)
だから我々は端末を安く購入できるのですね。めでたしめでたし。
‥‥

って、ちょっと待った!販売店はそれで良いかもしれないけど、じゃあキャリアは端末代金を払っていて損してるんじゃ?‥‥と思ったそこのあなた、鋭い。(笑)
はい。キャリアが今度は損をしてしまいます。じゃあこの部分はどうなっているのでしょう。

キャリアが無条件に販売奨励金○万円を販売店にあげるなんてボランティアのようなこと、企業として普通やりません。
販売奨励金の分はしっかりと回収しています。
それではキャリアがどこでこの販売奨励金を取り戻しているのかというと、それは契約しているみなさんが支払う月額料金なのです。

つまり、契約者の月額料金から少しずつ販売奨励金分を回収しているのです。
携帯電話を機種変更したことがある人なら知っているかもしれませんが、機種変更は前回の新規契約・機種変更から一定の期間経っていないと、1〜2万円程度の通常機種変価格より何万円も高くなっています。
これは、短い期間で機種変更されると、今まで使っていた端末の代金分を月額料金から取り戻せないからです。

長期割引ってありますよね。長く契約していると月額基本料金が下がっていく制度。
これは長く契約していればいるほど、端末代金分を月額料金からしっかり回収できているので、その分基本料金を下げても大丈夫なのです。
また、1年契約というものもありますよね。1年契約を前提として、途中で解約すると解約金がかかってしまうという制度。
これも同じような理由で、途中で解約されるとやっぱり端末代金が回収しきれないので、途中解約にはペナルティがかかるようにしているのです。


販売奨励金の弊害

販売奨励金制度はユーザが格安で端末を手に入れることが出来るメリットがあります。

ところで、販売奨励金って一体いくらぐらいなのでしょう。
再びmb.softbank.jpから「オンラインショップ」→「携帯電話新規購入」と進んでいき、今度は「新スーパーボーナス未加入価格」を見てみましょう。
これが販売奨励金ののった価格と考えられます。
税込み23,520円の705Tが7,140円に、71,280円の910Tは28,140円になっています。
平均3万円くらいの販売奨励金と考えることができそうです。

もし契約者がカメラやミュージックプレイヤーやワンセグといった付加機能だけを使いたいために、新規契約後すぐに解約したらどうなるでしょう?
いくら違約金がかかるとはいえ、機能満載の端末が格安で手にはいるのです。通話やメールができなくても十分です。
こんなことをユーザに考えられて、実行されてしまっては、キャリアは端末代金を回収しきれません。(実際には販売店に販売奨励金が支払われないので、販売店が一番損をするようです)

そこで、解約したら携帯の付加機能が使えないという端末も存在するようです。
参考:「ドコモも解約したらワンセグ視聴不可に」──一部報道にドコモがコメント (ITmedia)

さらに「ソフトバンクのおしゃれな薄いケータイをドコモで使えたらなー」とか思ったことありませんか?
実は規格上は使えます。でも実際には使えません。
前述したとおり、キャリアが端末に販売奨励金として端末の代金を負担してくれています。
そして販売奨励金はユーザからしっかりと回収しなければなりません。
他のキャリアで使わせるなんてできません。
で、これがSIMロックと呼ばれているものです。

そして私たちの月額料金は、端末を機種変更する期間に関わらず、一定の金額が全ての人から均等に取られていきます。


販売奨励金からの脱却

さて、ここはウィルコムファンの私のウェブサイトです。
ウィルコムについて触れましょう。(笑)

ウィルコムは残念ながら携帯電話各社に比べて契約者数も少なく、体力もないです。
よって、販売奨励金も携帯電話各社に比べて低いようです。

よって、ウィルコムの端末は価格が高い!とよく言われます。
ですが、販売奨励金が少ない分、月額料金が低いと考えることも出来ます。
その辺については料金比較:初期コストをご覧下さい。
さらに、WILLCOM SIM STYLEは販売奨励金がほとんどないという話です。

別の方法で販売奨励金を削減しようとしているのがソフトバンクです。
ソフトバンクの「新スーパーボーナス」は、「お持ち帰りの端末代金は格安だけどしっかりとローンで払ってね(だけど月額基本料金払ってくれるから割り引くよ)」という制度です。
ローンなのです。分割払いです。途中解約すると残金が全額請求されます。
が、その分、月額基本料金980円の「ホワイトプラン」というプランが出せたとも考えられます。


結論

販売奨励金がなくなれば、月額基本料金が1,000円〜2,000円くらいは下がると予想でき、自由に解約等ができます。
しかしその代わり、端末代金が上がります。

キャリア側も販売奨励金はかなりの負担になっているようで、どうにか下げたいようです。
しかし、月額基本料が値下げしても端末代金が高ければユーザはなかなかついてきません。(そうでなければ、僕が料金比較:初期コストを書いてウィルコムを応援しなくても、自然とウィルコムの加入者はもっと増えているはず)

というわけで、「携帯電話が安いのにはしっかりとからくりがありますよ」という話でした。